• コンクリートの面白さとやりがい

    執筆者情報
    ハンドルネーム A
    性別 女性
    年齢 40代
    女性技術者との関係 本人
    勤続年数 11~20年
    業種 建設

     

    コンクリートに対する情熱

    コンクリートを仕事とする魅力

    私は、ゼネコンでコンクリート工事に関して、①各工事現場の技術支援と②新技術の展開活動を行っています。

    ①各工事現場の技術支援では、フレッシュコンクリート(まだ固まっていないコンクリート)に求められる性能と硬化コンクリートに求められる性能との両立を念頭に、設計者や監理者と設計図書の仕様変更を協議したり、生コン製造や圧送・仕上げに関わる技術者の方々と連携しながら、コンクリート材料や工法の最適化を図っています。他の投稿者の方もコンクリートは料理に似ている書かれていましたが、その通りで、コンクリートの調合設定では、構成材料の組合せや分量を、おいしくなるよう決定します。また同じ調合でも、季節や養生条件などに敏感で、シェフの腕がものを言う、面白い材料です。品質確保にとても手間暇がかかる材料ですが、各技術者のノウハウが活かされ、それぞれの立場で最善が尽くされれば、素晴らしい品質の構造物を構築できる、技術者冥利に尽きる材料だとも思います。

    ②新技術の展開活動では、低炭素型の地球環境に配慮したコンクリートを扱っています。建設業は地球環境問題に対して大きなインパクトを与える産業です。新しい技術を盛り込んだコンクリートを実適用することにより、社会貢献ができ、将来の子供たちの住む地球を変えられると考え、とても大きなやりがいを感じます。

    コンクリートという材料の面白さと社会基盤を支えるやりがいとが混ざり合って、コンクリートを仕事にすることに魅力を感じています。また、手間のかかるコンクリートを扱うひとは実直で面倒見の良い人が多く、これもコンクリート業界に携わる魅力のひとつだと思っています。

     

    ライフワークバランスの保ち方

    ライフワークバランスの実現

    ライフワークバランスは、ライフとワークの時間比率を揃えることに注視されがちですが、ライフとワークの両者の充実と調合によってもたらされる相乗効果を目的とするそうです。

    私の仕事は前述の通りですが、家族は、夫と、小学生と保育園児の娘たちの4人暮らしです。長女出産の前後は同じ部署での業務で、出産後も割とスムーズに仕事に復帰しました。一方、次女出産後は新しい部署に移り、一から仕事を覚えることになったので、今考えれば時間的にも精神的にも余裕がなくなっていました。時代の要請も相まって、会社では両立支援制度が充実され、周囲の方々のご理解も厚く、夫も育児の男女参画の具現化に努めてくれていましたが、やはり自分の技術力の至らなさから仕事に対する思いが、家庭生活に影を落とした時期がありました。子育ては待ったなし、コンクリートの面白さややりがいも感じずにはいられない、綱渡りで目の前のことをがむしゃらにこなす毎日でした。そんな日々を経て、鈍足ながらもやっと現在では、仕事において充実感を覚えることも増えてきました。それに比例して、家庭でも、ちょっと手間のかかる料理をしたり、家族でゆっくり音楽を奏でたり手芸をする時間を心から楽しめるようになりました。そうなると、仕事面でも物事を俯瞰して眺められるようになり新しい発想をすることができたり、積極性が出てくることを実感しています。まさに本来の意味でのライフワークバランスの実現にようやく手を掛けたところかと思っています。

    ライフワークバランスの実現といっても、各々の充実のタイミングや度合いはそれぞれであり、寄せては返す波のようなものだとも思います。経験者としてお伝えできることがあるとすれば、特に女性はライフイベントにおいて物理的にキャリアの中断が起こりやすいので、早期にワーク面でスキルをつけておくほうが、ライフワークバランスの実現に有利であり、大きな相乗効果を生むことができるということかなと思います。

     

    その他 メッセージ

    エッセイをご覧の方へのメッセージ

    このエッセイをご覧の方は学生さんでしょうか。すでにコンクリートのお仕事に携わっておられる方でしょうか。女性か男性かという問いは今やナンセンスかもしれません。

    エッセイを書き進めている最中に、新型コロナウイルスが流行し、自分自身の中でも仕事や働き方も含めた生活に対する意識や価値観が変わっていく経験をすることになりました。

    世の中の「働き方」は、折からの政府のリモートワーク推進施策と奇しくも新型コロナウイルス流行を受けて大きく変わろうとしており、遠くで様子をうかがっていた建設業界も、建設業法の「働き方改革」の促進のための改正も行われ、いよいよ本腰を入れざるを得ない様相です。「コンクリート業界は?」と言えば、正直、生モノであるコンクリートと「働き方改革」の主軸であるリモートワークは現状のシステムでは相容れない部分が否めませんが、省人化や省力化を積極的に模索すべき時代が到来していると感じます。

    そのような変化の時代の中で、私たちも含め次世代を担う皆さんも戸惑うことが多いかと思います。社会基盤の礎ともなるコンクリートにおいては、今までの技術をしっかりと踏襲することは勿論、先に述べた模索を推し進め、システムごと変革するようなことも求められていくかもしれません。

    本学会支部では大学高専の先生方、ゼネコン、生コン製造、各材料メーカーなど様々な業種の技術者が委員会などを通じて一緒になって課題解決しています。関西という土地柄か、みなさんざっくばらんに意見を交わし、とても活気に溢れた場です。ぜひとも、みなさんもこの扉を叩いていただき、コンクリートの面白さを感じ、より良い業界を一緒に作ることができれば嬉しいです。

     

    ライフワークバランス(単位:時間)