• 逃げていたのに、いつのまにかコンクリートの深みに…

    執筆者情報
    ハンドルネーム RI
    性別 女性
    年齢 40代
    女性技術者との関係 本人
    勤続年数 20~30年
    業種 コンサルタント

     

    コンクリートを避けていたのに…

    子供の頃は、コンクリートは硬く、その硬いコンクリートの上で「こけたら痛い」としか思っていなかった。確かに、自転車でこけて頭にたんこぶを作ったり、ブロックの上でこけて膝を怪我したりと、いい記憶はない。それは大学進学時に土木工学を専攻し、コンクリートの作り方を習い、構造的なメリットを教わっても、正直好きにはなれなかった。研究室を決める時も、構造系にしようとは思ったが、コンクリート系の研究室は避け、鋼構造系の研究室に決めた。それなのに、研究テーマは、鋼とコンクリートの合成構造となった。コンクリートの特性がわかっていないと構造解析ができないので、渋々取り組んでいた。

    設計コンサルタントに就職して配属されたのは、橋梁やトンネルなどの長年使用されているコンクリート構造物を点検・調査し、補修・補強の提案をするというメンテナンスの部署であった。また、コンクリートだ。現地調査では、ヘルメットをかぶり、ハンマーを手にして打音検査をしたり、落ちてきそうなコンクリートを叩き落としたりしていた。手間はかかるが、長持ちさせる方法を考えるのは、ちょっと面白く感じてきた。おかげでコンクリート診断士の試験には苦労しなかった。

    橋梁を設計する部署に異動したら、ますますコンクリートを避けては通れない。仕事としてやっていくうちに、経験や知識も増え、技術士の資格もコンクリートで取得した。
    決して積極的にコンクリートにかかわってきたわけではないが、今ではそれが私の「飯の種」になっている。そもそも土木の道を選んでおいて、コンクリートを避けて通るのは無理な話だったなと今は思う。

     

    家族ができて ~共働きから、子育て~

    私は同じ会社の同じ部署の技術者同士で結婚している。社内では、私はコンクリートと鋼に、夫は基礎と耐震に詳しいことになっている。

    社内結婚というのは、お互い共通事項が多く、説明がいらないので、楽でいいと思っている。お互いが忙しそうにしている事情も把握できるのが一番のメリットかもしれない。ましてや、とてもありがたいことに、私は夫と同じ部署のまま働くことができているので、結婚しても、独身時代とそれほど生活のリズムは変えずに働けていた。

    子供が生まれると、さすがにそれは一変した。元々、家事能力の低い私では、仕事と子育てを両立させるのは大変だとは思ってはいたが、保育所に通わせている間は、実家の祖父母の力を借りながらなんとか乗り切れていた。ただ、仕事量が毎年増えてくると、いよいよ限界が見えてきた。このままでは「小1の壁」は乗り越えられそうにない。

    さて、どうするか・・・。仕事を辞めて専業主婦に転職したら解決するのかといえば、そうではない。そもそも自分の得意分野ではない土俵だけで勝負したら、さらに分が悪くなるイメージである。私の周りの人は皆それがわかっているようで、そういうアドバイスはなかった。

    そこで、夫の多大なる理解と協力のもと、実家の祖父母にもっと頼ることができるよう、いっそのこと二世帯住宅に引っ越すことにした。手間も費用もかかるが、背に腹はかえられない。皆がハッピーになるために、環境を整えた。

     

    逃げていたのに、いつのまにか深みに

    『コンクリートから人へ』というスローガンを聞いたときは、どうしてこんなに社会に貢献しているコンクリートがそんなことを言われるのか、『コンクリートは人、社会のため』の間違いじゃないのか、と思った。まるで、好きなものを卑下され、擁護しているのと同じ感覚である。

    最初は苦手意識があり避けていたが、コンクリートについて考える時間が増えるほど、好きや嫌いを超えた同志のような、無くてはならない存在となっていった。

    設計者である私ができることは、その特性を把握し、適材適所に活用することである。少し勉強した程度では、なかなか使いこなせないが、噛めば噛むほど味がでる。コンクリートの奥深い世界にもっと踏み込んでいきたい。

     

     

    ライフワークバランス(単位:時間)